弊社の熟練職人たちがそれぞれの持ち場(仕事)の特徴やコツ、作業中にいつも心掛けていることなどに答えてくれました。その道のスペシャリスト~熟練職人~たちの技をご覧下さい。
「マーキング切断」とは設計図にあわせて部材に寸法を書き、切断する作業のことです。
平らな板から立体的な船体ブロックを作るためのパーツを作っていきます。
船体ブロックは巨大な構造物ですから、原寸の設計図なんてもちろんありません。そのため人間の手で図面から実際のパーツに落とし込むわけですが、この段階で発生する誤差をどれだけゼロに近づけられるかが腕の見せ所。
この誤差が大きくなれば大きくなるほど後の工程でブロックに組み上げた時、さらにブロックをつなげた時に差が出てしまいます。船体ブロック製造の流れの中では最初の部分ですが、一番最初の工程だからこそ、より高い精度が求められる仕事だと考えています。
人の手で高い精度を出すには、経験しかありません。
最初の工程だからこそ、ここで間違ってしまうと全ての後工程に響きます。
図面を真に理解して責任ある仕事だと自覚し、ひたすら取り組んでいくことが大切です。
「曲げ」は文字通り平らな板を曲げることで必要な曲面を出す作業です。
鋼板を曲げる方法には『専用の機械で圧力をかけて曲げる方法』や、『ガスバーナーと水を操って鋼板を熱して曲げる方法』があります。特に水をかけてガスバーナーで鋼板を熱する作業は難しいですね。
方法は色々な種類がありますが、基本的にやることは鉄板を“美しく曲げる”こと。作業内容は単純に見えますが奥深いものです。キッチリとした図面どおりの曲がりが出せずにおかしな曲がり方になっていると、組み立てはできません。
硬い素材が相手の仕事なので、材料や図面によってそれぞれ異なる曲げ具合を自分の思い通りにコントロールするのは難しいことです。
どの方法で、どれくらい、どうすれば、どの程度曲がるのか…など、地道にキャリアを積んで曲げる感覚を体に覚えさせることが大切だと思います。
「小組立」は大組立の前に小さな部材を組み立てたり、大組立を行う時に組みやすいように仮組みなどをする仕事です。
例えるなら板を並べて「骨」となる部材を取りつけて「骨格」を形作っていきます。 小組立では部材がそれほど大きくなく、曲がりのない平板が中心なのが特徴です。
具体的には~材料を並べる→補強材を取付ける→溶接→仕上げをし、反転する→仕上げ・素焼き→大組立に渡す~という流れです。
組み立て中は図面と照らし合わせ、間違いやモレがないかチェック。
組み立てる部分によっては角度や曲がりのある物もあり、その場合は作業の難易度も上がるため慎重に作業を進めていきます。
船体ブロック製造では中間の工程ですが、図面に書かれた内容を正しく理解して、最終的に組み上がった形を正確にイメージして作業にあたるようにしています。
「小組立」で組まれたパーツを「船体ブロック」として組み立てるのが「大組立」です。
これは人間の体で例えるなら、頭・体・手・足などの部位を組み立てる仕事。別々に組み立てられたパーツを組み合わせたり、仮止めされたパーツ同士をこの工程で図面通りの形に正しく組み上げていきます。これまでの工程で作り上げられた多数のパーツを船体ブロックの形に組み上げる工程なので、図面を正しく理解せず組み立て順序を誤ると、組み上がらなかったり、美しい製品になりません。
また、最終的な「船体ブロック」としてのクオリティを高めるために、後工程の「溶接」によって鋼材が縮むことを頭に入れて計算し、組み立てを行っていくのもこの作業のポイントの1つです。
これをきちんと計算して組み上げることで、製品としてのクオリティが高まり、船体ブロック同士を組み上げた時にズレをおこしません。
クレーンなどの機材を使用し大きなパーツを移動させることの多い仕事ですから、怪我がないように細心の注意をはらいながら、常に作業の安全を心掛けて仕事しています。
品質が作業員の経験と技量とで大きく左右される作業の1つ。それが「溶接」です。
造船の現場では今、溶接工法が主流なため作業員の溶接技術の向上は欠かせません。
溶接という作業ではガスをたくさん使用します。そのためしっかりと換気をすることはもちろん、常に健康管理に注意しています。
作業効率と品質を高めること、そして体に無理をかけないためにも自分自身のペースをしっかり把握して、どうすれば少しでも楽に、より良い品質に仕上げることができるか…そんな人それぞれ異なる「コツのようなもの」を早くつかむことが、技術習得と溶接作業員としてのレベルアップにつながると思います。